遺伝性難聴
先天性難聴は約1000人に1人生まれるとされ、その約半数が遺伝性難聴と推測されています。難聴以外の症状を伴わないものを非症候群性難聴といい、遺伝的な要因による難聴の約70%を占めています。また、難聴以外の随伴症状を伴うものは症候群性難聴といい、これまで少なくとも約400の症候群性難聴と100以上の非症候群性難聴が判明しています。
原因の遺伝子部位も現在まで50以上が同定されていて、更に解析が進められています。
遺伝性難聴を大きく分類すると、染色体遺伝子異常によるものとミトコンドリア遺伝子異常によるものに分けられ、染色体遺伝子異常によるものでは、常染色体優性遺伝のもの、常染色体劣性遺伝のもの、伴性遺伝するものに分類されます。非症候群性難聴では、遺伝形式別では常染色体劣性遺伝によるものがそのうち約80%を占めるとされます。
染色体遺伝子異常による難聴
ヒトゲノムの30億塩基対の中に約8万の遺伝子があると見積もられており、解析がなされています。1997年にキャップジャンクション蛋白であるコネキシン26に対する遺伝子異常が家族性感音難聴の原因になってることが示されました。その後様々な原因遺伝子が確認されつつあり、併せて聴覚生理や病理の研究が進められています。
常染色体優性遺伝
Warrdenburg症候群や 神経線維腫症2型が知られています。
常染色体劣性遺伝
コネキシン26遺伝子異常の一部やPendred症候群、Usher症候群などが知られています。
伴性遺伝
Alport症候群やDFN3といってアブミ骨固着に伴うgusher症候群、その他、混合難聴を認めるものがあります。
ミトコンドリア遺伝子異常による難聴
ヒトミトコンドリア遺伝子は、16569塩基対からなり、全配列がすでに解読されています。
この遺伝子変異の1例として、ミトコンドリア脳筋症に難聴を伴う家系が認められ解析されて、ミトコンドリア3243位の点変異によるものであることが確認されています。その他にも1555位点変異はアミノ配糖体抗生物質による聴器毒性に関与していることが判明し、7445点変異は掌蹠角化症と関連している事が報告されています。
一般的に遺伝性難聴が示唆された場合には大きく3段階に分けて検査が行われます。
第1段階として、聴力検査を含む耳鼻咽喉科的検査とその他の疾患を含めた家系図作成などの遺伝的要因の確認が行われ、乳幼児では COR や ABR
検査などが必要となります。
第2段階として、側頭骨CTなどの画像検査や平衡機能検査、眼科的検査や尿検査などを行い、内耳奇形やその他の機能を把握します。
第3段階として、心電図、甲状腺機能検査、DNA解析等が行われます。
遺伝性難聴の検査として末梢血白血球のDNAを調べることで遺伝子診断が可能となり、近年網羅的に検索が行われ様々な知見が得られておりますが、遺伝子異常を根本的に治す治療法については確立されていない状況です。
従いまして、伝音難聴を認める場合は手術により改善が期待される場合もありますが、感音難聴の場合には程度により対応に苦慮する場合があります。幸い多くの場合は完全聾までには至っていない場合が多く、補聴器の装用効果が期待でき、残念ながら難聴が進行し聾になった場合には人工内耳が考慮されます。
遺伝性難聴を認める場合では聴力以外の随伴症状や、婚姻・出産に関する出生前診断等の倫理的問題についても考慮しなければならない事例があり、遺伝相談や専門的カウンセリングが必要となることがあります。
おみみの検査の方法
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目で見てかくにん
鼓膜を直接観察致します。鼓膜の色はどうでしょう、腫脹はないか、混濁や発赤、充血はないか、またはお水が溜まっていたり、あぶくが透けて見えていたり、肉芽(かさぶたをはいだ時のモコモコした組織)が無いか、陥凹していたり、内側の壁に癒着していないか、穿孔(穴)がないか、、等鼓膜の状況を確認するのです。。 -
大きくしてかくにん
鼓膜の状態や、鼓膜の内側のお部屋の状態を顕微鏡でみて確認します。また、針状鏡といって、針ほどの細さの特殊な内視鏡を使用して確認することがあります。 -
こまくの動きをかくにん
お耳の穴に栓をした状態をとした上で、機械で鼓膜に気圧を加えたり、引いたりして鼓膜の動き具合を調べます。正常では鼓膜の内側も外側も空気ですので、同じ圧力の状態となっております。鼓膜はその名の通り”膜”ですので、押したり、引いたりすると鼓膜が良く動きます。しかしながら、鼓膜の内側のお部屋の中に水が溜まっていたり、鼻のすすりすぎから、鼓膜の内側のお部屋が陰圧になっていると、鼓膜の動き方が変わってきます。この、鼓膜の動き方をグラフにして表して確認いたします。 (鼓膜の内側のお部屋のの圧力を調整してくれる耳と鼻の間にあるの管の機能が悪くなると鼓膜の動きが悪くなり始めます。) -
聞こえ方のかくにん
通常我々は音がした場合には、密度波となった振動音を鼓膜が受け取り、その振動を鼓膜の内側のお部屋にある小さな3つの骨が、内耳というセンサー部分まで増幅しつつ伝えて、この機械振動が内耳にて電気信号として変換されて脳へ送送られて、最終的に音として知覚されます。この経路のいずれかに問題が生じると聞こえの能力が下がります。 聞こえを確認するためには、自覚的な検査と他覚的な検査があります。乳児であれば、生下時に新生児スクリーニングを受けることが多いと思いますが、OAEという検査を行ったり、ABRやASSRといった刺激に対しての脳波を測定加算して、反応の有無を検知する事によって聴力を調べることが可能です。幼児となると、おもちゃを利用して聞こえの検査を行ったり、5歳以上となると成人と同じ聴力検査が可能となります。