Bスポット療法について

 このページではBスポット療法について詳しく説明させて頂いております。
ゆっくりご覧下さいませ。

鼻咽腔(上咽頭)について

お口から見ると口蓋垂(のどちんこ)の裏の上の方で鼻の奥と交通する部分を鼻咽腔(びいんくう)または上咽頭(じょういんとう)といいます。


 ここは鼻呼吸をする時に鼻を通った空気が一番始めに当たって方向転換する部分で、吸気中の塵やばい菌に対し反応を起こして、体を外部の病原体の侵入から守ってくれる最初の関所とも言えます。

 この生体防御反応に関係し鼻咽腔(上咽頭)には咽頭扁桃というリンパ組織があります。これは口蓋扁桃(いわゆるのどの奥の両脇の扁桃腺)と同じく体の免疫防御反応に関係しています。    

また、鼻咽腔(上咽頭)の上には解剖学的に下垂体というホルモン分泌の司令塔があることから、上咽頭は“神経のツボ“と言われることもあります。


鼻咽腔(上咽頭)の診察について

鼻咽腔(上咽頭)は鼻からの内視鏡を用いない限り、その状態を正確に把握することは困難です。このため、耳鼻科医師以外では病態を確認されることが少なく、特に注目されて治療されることが少ない部位でした。

鼻やのどの症状として自覚出来ていれば耳鼻科を受診できるのですが、そうではない場合、耳鼻科以外の診療科を受診されても鼻咽腔炎(上咽頭炎)となかなか気づかれない場合が多いのです。


鼻咽腔の病態について

咽頭扁桃自体、またはこれが肥大し(又は炎症を生じ)腫れている場合をアデノイドと呼びます。いびき睡眠時無呼吸、そして子供の場合では滲出性中耳炎の原因になる事があります。またアデノイドの炎症が強い場合(咽頭扁桃炎)強い頭痛を起こすこともあります。

5-10才で自然退縮する傾向があり、大人になると多くの場合アデノイドは小さくなっておりますが、感冒罹患時などに急性の炎症がおこることは稀では無く、この部位に生じた炎症を鼻咽腔炎(上咽頭炎)といいます。

鼻咽腔炎(上咽頭炎)は最初にはのどの痛みや灼熱感として感じることが多いのですが、急性期を過ぎて治らずに慢性化すると長期にわたり頭痛や咳・咽頭異和感・鼻づまり・後鼻漏等の不明確な症状に移行し原因部位の同定が難しくなる事があります。肩こり・めまい・耳鳴りという症状を生じて、原因が分からずに悩むということも有ります。。

この様に、上咽頭は外気と常に呼吸時に接触する場所でもあることから、慢性的炎症を容易に生じ得ることが分かります。この為、いわゆる不定愁訴の原因として、鼻咽腔炎(上咽頭炎)は常に考慮すべき疾患となります。


Bスポット療法とは

この鼻咽腔(上咽頭)に薬剤を塗布して炎症を治そうとする治療をBスポット療法(鼻咽腔(上咽頭)塩化亜鉛塗布療法)といいます
 
治療する部位:鼻咽腔(びいんくう:Biinnkuu)のBを取って名付けられ、東京医科歯科大学耳鼻咽喉科の堀口申作名誉教授が提唱された治療法で
50年以上前から行われております。

保険治療の範囲内での加療となりますが、堀口先生が1968年の日本耳鼻咽喉科学会にて宿題報告された後は、その効果について取り上げられることが乏しく、一部の耳鼻科医の間でのみ施行されてきましたという歴史があります。併せて、その病態についても見逃されていることが多いとも言えるのです。


Bスポット療法の実際


 上咽頭を綿棒で麻酔し(注射無し)、1%塩化亜鉛液をお口を通して鼻の奥のBスポットに大きな曲がった綿棒を使用して塗布します。鼻から細い綿棒を使用して擦り付けることもあります。(状況によりファイバースコープにて確認致します。)

炎症や後鼻漏が強い場合、細菌検査を行うことがあります。(細菌検査は約1週間で結果が得られますが、薬剤感受性が確認出来、抗生剤の使い分けが可能となります。)

炎症で強く腫れている場合綿棒に上咽頭から出血した血が付くことも多く、ファイバースコープで観察すると、鼻咽腔の表面に不自然な光沢や出血を確認する事もあります。

副作用に重篤なものは有りませんが、当初痛むこともあり、炎症が治まると痛みは和らぎます。ヒリヒリ感は長い方で半日ほど続く場合もありますが、痛みが強い程、炎症が炎症が強く存在していると推測されますので、その様な方こそ宜しければ治療を行う必要があります。時に翌日に痛みが強くなったり、後鼻漏の症状が一時的に悪化することがありますが、多くは徐々に改善します。)

感冒による咽頭違和感に対しては1回の治療で治癒する場合もありますが、特定の頭痛や頭重感・目の奥の痛み・頑固な鼻づまり・肩こり・浮動感といった症状に対しては週に12回の治療を12ヶ月続けると効果が期待出来ます。

10-15回程度施行して状態が改善された場合、無症状であれば終了となり、状態維持のため数週間に1回程度継続治療を行う場合もあります。



塩化亜鉛とは?

治療に使用する塩化亜鉛(ZnCl2)は、亜鉛の塩化物で、1648年にドイツのグラウバーにより合成されました。
 主にメッキの表面清浄や防腐剤として使用されていますが、蛋白質を変性させ、組織や血管を縮める作用を有します。
 
また、塩化亜鉛は唾液中での細胞の分解を抑制し、 唾液細胞成分中のタンパク分解酵素の活性も阻害して細胞の腐敗化による揮発性硫化物の発生を抑制します。揮発性硫化物は口臭の主な原因とされていますが、これにより口臭抑制効果が示唆されています。(八重垣健 口腔衛生学会雑誌 Vol. 39 (1989) No. 3 P 377-386) Bスポット療法においても鼻の奥からの鼻臭への効果が期待されます。

原法では1%塩化亜鉛液を用いますが、治療後の痛みの軽減目的と幼小児の治療に用いる為、当院では0.5%の塩化亜鉛液を使用しています。






Bスポット療法の効果

福生病院大野芳裕先生と慶応義塾大学國弘幸伸先生の1999年耳鼻咽喉科展望での報告「上咽頭炎に対する局所療法の治療効果」では、上咽頭炎の主訴として咽頭痛、めまい、咽頭異物感、後鼻漏が全体の約70%を占めBスポット療法による改善率は著明改善と改善を合わせて86.8%とされています。

 症状別ではめまいが76/7% 改善し、頭痛が72.0%、耳閉感71/1%、咽頭痛が67.2%、肩こりも67.2%、咽頭異物感の66.7%、その他、耳鳴り62.5%、後鼻漏の64.3%に改善が認められたと報告されています

(ここで、、上咽頭炎からめまいの生じる機序は自律神経系との関与や頸部の筋群との関与が指摘されていますが依然として不確定です。頭痛については上咽頭からの放散痛である可能性が示唆されており、偏頭痛においても誘発時における三叉神経節及び神経末端への何らかの刺激に関与している可能性が推察されています。)


 上咽頭の慢性炎症には抗生剤や消炎鎮痛剤の効果が低いことが指摘されており、Bスポット療法の効果が期待されています。



その他の効果

病巣感染症という疾患概念があります。扁桃組織に慢性炎症がある場合に、免疫学的異常からそれらから実際には離れている皮膚や腎臓、関節などの臓器に様々な異なる障害を引き起こすことを指します。掌蹠膿疱症やアトピー性皮膚炎、乾癬、紫斑病、慢性関節リウマチ、胸肋鎖骨過形成症、急性腎炎やIgA腎症などが代表ですが、扁桃病巣起源の様々な免疫応答が病気を引き起こすとされています。

Bスポット療法が上記症状に有効であるという報告があります。(IgA腎症の治療としてスタンダードとなった扁摘パルスを提唱された腎臓内科医・堀田修先生はIgA腎症に対するBスポット療法の効果についても報告されておられます)

上記機序についてまだ不明確な部分が多く、Bスポット療法にて自覚症状が改善したとしても自己判断で各病態の専門的治療を終了することはお勧めできず、アトピー性皮膚炎、膠原病、IgA腎症等について、皮膚科医や膠原病専門医、腎臓内科医といった各診療専門医の検査・治療を必ず継続する事が大切です。
 Bスポット療法は補助的な治療法であることを御理解頂く必要があります。


その他

耳管開放症や耳管狭窄症という耳管機能に問題がある患者さんでも少なからず鼻咽腔炎(上咽頭炎)が潜在している可能性があり、状態により治療を行うことが有ります。

 後鼻漏については上咽頭炎のみでなく慢性副鼻腔炎その他の疾患でも起こることがあります。正常な方でも生理的に鼻粘膜から常に粘液は分泌され流れている事実もあり、生理的範囲内か、病的であるかについては悩ましい場合も有ります。





最後に、、Bスポット療法についての受診時のポイントです。

1.炎症が強い場合には痛みが数時間~翌日持続する事があります。しかしながら、その分効果が期待できます。我慢せずに鎮痛剤を内服等の上、治療継続をお勧め致します。

2.治療後に口や鼻から少量の出血を認ることがありますが、経過を観察して頂ければ大丈夫です。鼻水・痰等を反応して認めることもあり、一時的な症状増悪や頭重感等を生じる事もあります。

3.上咽頭炎の改善につれて上記の痛みと出血は基本的に軽減されます。

4.飲食は通常通り行って問題ありません。

5.ネブライザー治療や処置内服等の加療はそのまま平行して行います。