変声障害
変声障害は機能的音声障害の代表的疾患です。
声変わりは第二次成長の一つの生理現象で、思春期のはじめに現れ、男子では14~15歳頃に、女子ではこれより早期に始まります。男子では喉頭上下前後径が急速に増大し、喉頭隆起が前方に突出します。女子では主に上下に伸びます。変声期に声はガラガラのしわがれ声となり、響きが異なりますが、通常3ヶ月から1年以内に消失し成人の声に移行します。これにより男子は声域が1オクターブ低下、女子は低音域が3度程度低下します。
症状として喉頭内腔の充血と分泌亢進を認め、生理的炎症状態となります。喉頭の異常感と咳嗽刺激を認め、発声時に声門が完全に閉鎖することなく、声門後部に三角形の間隙を形成します。
声がわりの経過が異常となり症状が出現する場合を声変わり障害といって、変声期の声の誤用が主原因となります。遷延性変声障害は声がわりが長引き声の飜転が続き、持続性仮声は変声期を過ぎても音声が成人の声位に下降せずに特有の高い声となります。
治療としては発声練習を行います。低い声を出すように練習を行ない、甲状軟骨喉頭隆起を下後方に圧迫する方法や頭部を後屈させながら発声する方法、甲状軟骨を左右から圧迫する方法などがあります。
その他、内分泌機能に関連した音声障害では性腺に関するものが重要で、性腺機能低下症では思春期の喉頭発育が見られず喉頭隆起が触れなくなります。治療には男性ホルモン剤の定期投与を行います。
一方、男性ホルモンには男性化作用があるために、女性に投与することで変声障害に類似した音声障害を起こすことがあります。乳癌治療や月経困難症、更年期障害などで男性ホルモン剤が使用されるため、声の男性化を生じることがあります。蛋白同化ステロイドも同症状を生じ得るために注意が必要です。。
症状として声がれ、高い声が出ない、声が低くなると言うことがあり、喉頭発赤と後方間隙の形成、分泌増加などを認め、高音発声すると線状の声門閉鎖不全を認めます。多毛や月経不順を認めることもあります。
これら音声障害はホルモン剤使用中止でも改善しにくいため音声訓練が行われます。
その他、ホルモン障害と関係する音声障害には、副腎性器症候群や甲状腺機能低下や亢進、下垂体機能異常などがあります。
ことばのけんさ方法
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おみみ・おはなのかくにん
おみみ・おはなに問題がないかを確認致します。 -
おのどのかくにん
おくち、おのど、こうとうに問題がないかを確認致します。 -
きこえのかくにん
きこえに問題がないかを確認致します。 -
はついくをかくにん
発語面、言語理解面、社会性面、運動面等について各種の発達スケールを使用して発育の確認を行い、年齢相応かどうか比較します。 -
音声機能をかくにん
発声して頂いて、声の高さ・強さ・音色について確認致します。声がれ(嗄声)を認める場合、大まかな嗄声の状態、ガラガラ度合い、息漏れの程度、力のなさや、努力の程度などを確認致します。また、発声の持続時間がどの程度かを確認したり、声帯をストロボ撮影して、声帯振動の規則性や振幅、固定の有無、声帯の粘膜波動の状態や声門の閉鎖状況について確認することがあります。 -
言語機能をかくにん
課題検査を行い音読、模倣、書字、自由発語が可能かを確認して、音の性質を確認致します。音程・つよさ・リズム・流暢性といった韻律や、単音・単語・会話の構音状態についても確認致します。
障害音を認める場合には母音か子音か、開鼻声等の共鳴障害の有無や、語音省略・置換・ゆがみについて確認し、ことばの速度と感覚的理解力について確認を行います。 -
その他のかくにん方法
神経学的諸検査や、発達心理学的検査、内分泌機能検査や環境因子の検査が必要に応じて行われます。また、X線、CT、MRI等の画像検査や、アレルギー検査、ウィルス感染についての確認を行うことがあります。