言語発達遅滞
言語発達遅滞とは幼少期において言語機能が明らかに劣る状態が認められることで、生活年齢から期待される言語行動と実際の行動を比較して評価します。原因・病態は様々で、環境側面や心理的側面を考慮し対応していく必要があります。
言語発達遅滞は受容性、中枢性、表出性に区別されることがあり、これは言語コミニュケーションが、ある人が相手の話を聴いて理解し(受容)、自分で考え(中枢)、声に出して意見・意志を表明する(表出)、という作業を連続してお互い繰り返すことで成立しているためです。厳密な区別は不明瞭な場合もありますが、その他虐待の様に環境問題がある場合を環境性言語発達遅滞と言います。心理学的には注意欠陥多動症候群や自閉スペクトラム障害において、自発的アプローチや応答に問題があり、共同注視・アイコンタクトなどのコミニュケーションが成立せず言語発達遅滞が生じるとされます。
原因にて分類する場合には、精神発達遅滞によるもの、聴力障害によるもの、その他の三つに分類され、その他にはいわゆる発達性言語障害や自閉症、脳性麻痺などによる言語発達遅滞を含みます。
診察では言語発達について理解面と運動能力面から評価することが必要で、妊娠中や周産期異常、発育について問診を行い、明らかな遅れが認められる場合に精神神経学的検査と聴力検査を行い、心理面からも検討を行う場合があります。
治療として聴力低下を認める場合、補聴器の装用等聴能訓練を行い、必要に応じて聾学校や特殊学級の利用を考慮します。精神発達遅滞に対して精神発達レベルに応じた治療を行い、言語能力を引き出す対応をしていくことになります。
口蓋裂や舌小体短縮症などの器質性構音障害が認められる場合には手術にて改善を図りますが、背景にはその他の言語発達上の問題がある場合も多く、術後の言語評価も必要となります。
ことばの遅れから知的障害が指摘される場合もあり、音韻意識の低下や認知異常・作業記憶の低下などから言語発達遅滞を生じる場合、機能性構音障害で音韻処理に問題が有る場合などでは言語発達遅滞から学習障害を生じる場合もあり注意が必要となります。
3~4歳児では吃音(どもり)を認めることもありますが、経過観察で治癒が期待できます。
一般に言語発達遅滞の多くは医師のみではなく、言語聴覚士による対応や保育士による療育、その他特別支援学級など多職種による介入が必要となり、長期的な視野から応対していく必要があります。
ことばのけんさ方法
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おみみ・おはなのかくにん
おみみ・おはなに問題がないかを確認致します。 -
おのどのかくにん
おくち、おのど、こうとうに問題がないかを確認致します。 -
きこえのかくにん
きこえに問題がないかを確認致します。 -
はついくをかくにん
発語面、言語理解面、社会性面、運動面等について各種の発達スケールを使用して発育の確認を行い、年齢相応かどうか比較します。 -
音声機能をかくにん
発声して頂いて、声の高さ・強さ・音色について確認致します。声がれ(嗄声)を認める場合、大まかな嗄声の状態、ガラガラ度合い、息漏れの程度、力のなさや、努力の程度などを確認致します。また、発声の持続時間がどの程度かを確認したり、声帯をストロボ撮影して、声帯振動の規則性や振幅、固定の有無、声帯の粘膜波動の状態や声門の閉鎖状況について確認することがあります。 -
言語機能をかくにん
課題検査を行い音読、模倣、書字、自由発語が可能かを確認して、音の性質を確認致します。音程・つよさ・リズム・流暢性といった韻律や、単音・単語・会話の構音状態についても確認致します。
障害音を認める場合には母音か子音か、開鼻声等の共鳴障害の有無や、語音省略・置換・ゆがみについて確認し、ことばの速度と感覚的理解力について確認を行います。 -
その他のかくにん方法
神経学的諸検査や、発達心理学的検査、内分泌機能検査や環境因子の検査が必要に応じて行われます。また、X線、CT、MRI等の画像検査や、アレルギー検査、ウィルス感染についての確認を行うことがあります。