気管・気管支異物
気道異物は呼吸困難から窒息、最悪の場合生命に危険を生じる可能性があり、重要な救急疾患で、乳幼児の死因として最多となっています。
声門上の異物を喉頭異物、声門下の異物を気管・気管支異物と分類しますが、気管・気管支異物は3歳以下に多く、ピーナッツや豆類が多い特徴があります。口に物を入れたまま、泣く・驚く・ふざけると吸い込み発症する場合が多く、注意が必要です。
気道に異物が侵入した場合、激しい咳が起こりますが、気管支に固定されると一時的に咳は軽減し異物が放置されます。その後、感染・発熱を生じてから問診にて疑われ発見される場合があり、原因不明の咳や繰り返す肺炎の場合には気管支異物が常に考慮されます。
診察では問診にて異物誤嚥の有無を確認します。初発症状は激しい咳発作ですが、気管支で異物が固定すると咳はなくなるため、ご家族からの詳しい情報が大切となります。視診では胸郭運動の左右差を確認し、聴診で呼吸音の減弱の有無を調べます。異物が気管支に存在する場合、末梢呼吸音が減弱し吸気音の左右差が認められます。
画像検査にて異物が確認できれば診断は確定しますが、放射線透過性の異物の場合もあり、吸気時と、深呼気時の胸部X線撮影を比較して心縦隔陰影の移動を確認したり、患側肺野の透過性亢進や気腫様変化を認めたり、無気肺、肺炎像を呈することがあります。頸部軟線撮影、ゼログラフィー、肺血流シンチ、CT、MRIなども有用となります。
気管内を上下するいわゆる舞踏性異物の場合には声門に嵌頓して窒息する危険性がありますので、尻もちをつかせるなどで、どちらか一方の気管支に落下させた後に摘出します。声門に嵌頓した場合には口・鼻を術者の口で覆い空気を一気に吹き込んで嵌頓異物を落下させることもあります。
摘出は全身麻酔下にファイバースコープにて異物の観察を行った後に、換気型の硬性気管支鏡を用い異物に適した鉗子を用いて摘出します。ラリンゲアルマスクを使用する場合では、換気下に気道を確保しつつファイバースコープにて異物の位置・形状、声門の状況などの観察を行った上で異物を摘出します。最近ではテレスコープ型の気管支鏡も使われることがありますが、異物が末梢に嵌頓して除去できず、気管支粘膜の腫脹から重篤な合併症を引き起こし肺葉切除となる場合も報告されています。
摘出後24時間以内は声門や声門下浮腫を生じることがあり、抗生剤やステロイドを投与し去痰剤等の吸入を行いつつ呼吸状態に注意し経過観察となります。
乳幼児の気道異物は予防が大切であり、手の届く範囲にものを置かないように工夫したり、日頃から豆類は与えないようにするといった対応が望まれます。
きかんのけんさ方法
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くだを入れてかくにん
お口やお鼻、気管切開口から管を入れて、気管の各部位の状態を確認することがあります。その他にも手術の時には硬性気管支鏡といって、まっすぐな金属製の筒を入れて観察する事もあります。 -
画像でかくにん
気管・気管支のX線撮影や造影検査を行う場合があり、CTやMRIといった体を輪切りにして内部の変化を確認する機械を使用して問題が無いかどうかを調べる事があります。途中で造影剤といって、血管や血流のよい部分がよく区別出来るようにする注射をして確認する事もあります。 -
細胞や組織の状況をかくにん
必要に応じて生検鉗子を利用して細胞を取って、顕微鏡下に細胞の状態を確認いたします。また、痰や粘液等を採取してどのような細菌に感染しているのか、またはどのような状態の変化が認められるのかを確認します。 -
その他のかくにん方法
アレルギー性疾患の関与が疑われる場合には採血して原因物質について確認を行います。ウィルス感染やその他の感染症等が疑われる場合にも採血して確認をすることがあります。