流行性耳下腺炎
ムンプスウイルスが感染して生じる耳下腺炎です。
ムンプスウイルスは気道分泌液内に排出されるため飛沫感染により伝播します。
10歳からの発症が多く、通年性ですが冬から春が多い傾向があり、3,4年周期で流行が見られています。
症状を伴う顕性感染の場合、食欲不振・筋肉痛・全身倦怠感などを生じ、数日以内に耳下腺全体が腫脹します。耳下腺炎は両側に生じ、腫脹は2、3日後に消退し始め、発症後約10日前後で回復することが多く、2、3週間かかることもあります。
その病態は間質の浮腫状上腫脹が主体で、皮膚発赤はなく、ステノン管からの膿汁排泄もありません。
潜伏期は12~25日で気道粘膜に感染したウイルスは粘膜上皮細胞や局所リンパ節で増殖して血液経由で全身臓器に広がります。
ウイルスは耳下腺・顎下腺・膵臓・生殖腺等の腺組織と中枢・末梢の神経組織に親和性があり、発症前後の各1週間は感染能力があります。
ウイルス感染時に症状を伴う顕性感染は70%に過ぎず、症状の現れない不顕性感染の方もおられ、この不顕性感染の方も感染源となりうるため感染源の特定が困難な場合があります。
検査では、唾液腺の腫脹に伴い血中アミラーゼ活性が上昇しますが、診断としては急性期と回復期の血清を比較し4倍以上の抗体価上昇にて行うか、 IgM 抗体価の上昇を確認し行います。ウイルスは急性期の唾液や尿中からも分離可能です。
合併症として脳炎、無菌性髄膜炎、口蓋炎、副睾丸炎、膵炎が比較的多く見られ、頻度が低いですが難聴や甲状腺炎、関節炎、腎炎、心筋炎なども認められます。
脳炎・無菌性髄膜炎は合併症としては最多で、発熱、嘔吐、項部硬直、頭痛などが生じ、解熱をともに回復します。
精巣炎・副睾丸炎は、耳下腺に数日遅れて発症し、睾丸の腫脹と疼痛を起こします。思春期後の患者の半数近くに合併、一側性であることが多く、不妊症には多くは至りません。
膵炎は数%に生じ、血中アミラーゼ・リパーゼの上昇等を認めます。
難聴は突然発症し、一側性高度感音難聴を生じることが多いのですが、発生率としては報告により0.01%程度です。
鑑別診断としてはコクサッキーウイルス、エコーウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスなどによる耳下腺炎で、鑑別のためにはウイルス分離や血清診断が必要です。
治療としてはウイルスであるために抗生物質は無効ですので、対症療法となります。
予防として3種混合ワクチン(麻疹、風疹、ムンプス)を行いますが、一部に軽度の無菌性髄膜炎が生じることがあり注意が必要です。
だえきせんのけんさ方法
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目で見てかくにん
外見から腫脹がどの部分にあるのか、両側か片側か、皮膚の発赤腫脹はあるのか等を確認致します。 -
触ってかくにん
腫脹であればその程度はどのくらいか、硬いかどうか、周囲との癒着はあるのか、表面の性状は、皮膚の状態はどのようなものか等を確認致します。唾液腺を圧排してどのような唾液が出てくるかを確認したり、唾液管に石が詰まっていないか両手で体内外からはさんで確認することもあります。 -
超音波でかくにん
超音波の検査機械を使用して腫脹の性状を確認致します。病変と他の組織の境界面や病変内部の信号、病変を通過した後の信号の状況や唾石という石の有無などを確認致します。 -
画像でかくにん
唾液管に造影剤を注入してレントゲン撮影を行い唾液腺の状態を確認したり、CTやMRIといった、断層で体の内部の変化を確認する機械を使用して問題が無いかどうかを調べます。途中で血管や血流のよい部分がよく区別出来るように造影剤を注射をして確認する事もあります。 -
細胞や組織の状況をかくにん
必要に応じて針を刺して細胞を取って顕微鏡下に細胞の状態を確認いたします。また、唾液等を採取してどのような細菌に感染しているのか、またはどのような状態の変化が認められるのかを確認します。 -
その他のかくにん方法
アレルギー性疾患の関与が疑われる場合には採血して原因物質について確認を行います。ウィルス感染やその他の感染症等が疑われる場合にも採血して確認をすることがあります。最近では唾液管自体に管を入れて、内部を確認している施設もあります。