滲出性中耳炎
鼓膜の内側の空間(鼓室といいます)に滲出液がたまる中耳炎です。サラサラな液であったり、ねっとりとした液体であることもありますが、本来は空気が充満している空間に液体が溜まるようになると、鼓膜の動きが悪くなり、鼓室の中にあって鼓膜の振動を伝える役割を持つ骨(耳小骨といって小さい骨が3つあります)の動きも低下して、外からの音信号を鼓膜で受けて耳小骨を伝わりながら増幅され、内耳へ伝えて電気信号としてから脳へ伝えるというシステムが本来望まれる様には働かなくくなります。この結果、聞こえが悪いという状態が起こります。
鼓室に液体がたまってくる理由としては耳管という鼓室とのどをつなげる管の機能(鼓室内の圧力を外圧と一定に保つ働きがあります)が悪いために生じることがほとんどです。
滲出性中耳炎の場合、急性中耳炎と異なり痛みが表に出てこないことが多く、”この子は集中力のある、マイペースな子なのね。だから時々返事をしないのだわ。。”と受け取られて発見が遅れることがあります。
その結果、発語が遅れたり、言葉の歯切れが悪くなったりすることがあります。
しかしながら、更にそのような場合でも、”この子は個性でちょっと言葉が遅いのね。。サ行やカ行ががはっきり喋っていてわからないけれどそのうち良くなるのだわ、大丈夫♪”と、どちらも受診されずそのまま経過を観察、、となっていることも有ります。
確かに自然に治癒している場合も有るかもしれませんが、呼びかけに対しての反応が悪いお子さんや、言葉が普通よりかなり遅れているお子さんの場合、滲出性中耳炎となっている可能性があり、一度耳鼻科を受診されることをお勧めいたします。
治療としては耳から鼻・咽頭にかけての炎症を抑えるお薬であったり、関係している細菌に対しての抗生物質を内服したりして、鼓室の中の液体が吸収されたり排出されたりするように促します。耳管という耳と鼻をつないでいる管に空気を通す治療を行う場合もあります。
鼻炎が強く、経過が長引く場合には抗生剤を長期間服用することもあり、残念ながら投薬・処置加療に対して一定期間抵抗性がある場合には、一度鼓膜を切開して貯留している滲出液を物理的に除去して環境を整えたりします。切開してみるとネトネトの滲出液が貯留していて投薬加療にも限界があると感じる機会も度々です。
また、頻度は少ないのですが、たびたび切開しても改善を認めない患者様の場合は、鼓膜の内部の空間の圧力と外圧とを同じ状態に保ってくれる鼓膜換気チューブという米粒大のチューブを、最終的に顕微鏡で観察しつつ鼓膜にを留置したりすることが必要になる場合もあります。。
滲出性中耳炎の増悪・遷延化を予防するためには通院頻度を守り、しっかりと内服して治療しましょう。鼻すすりや、指しゃぶり、おしゃぶりは好ましくありません。また、プールで潜ったりすることはお勧め出来ません。
滲出性中耳炎はバイオフィルム感染症とも言われます。中耳腔に貯留していた液の細菌の検出率は低いのですが、PCRといって遺伝子を増幅して検査する機械を使用すると高率に細菌ゲノムが検出されるのです。これは細菌がバイオフィルム内で生存しているため培養検査では不検出となっていると考えられています。投薬・処置加療に抵抗して鼓膜チューブ留置を行うことが有効な理由も、このバイオフィルムが処理されやすくなることからであると考えられています。
おみみの検査の方法
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目で見てかくにん
鼓膜を直接観察致します。鼓膜の色はどうでしょう、腫脹はないか、混濁や発赤、充血はないか、またはお水が溜まっていたり、あぶくが透けて見えていたり、肉芽(かさぶたをはいだ時のモコモコした組織)が無いか、陥凹していたり、内側の壁に癒着していないか、穿孔(穴)がないか、、等鼓膜の状況を確認するのです。。 -
大きくしてかくにん
鼓膜の状態や、鼓膜の内側のお部屋の状態を顕微鏡でみて確認します。また、針状鏡といって、針ほどの細さの特殊な内視鏡を使用して確認することがあります。 -
こまくの動きをかくにん
お耳の穴に栓をした状態をとした上で、機械で鼓膜に気圧を加えたり、引いたりして鼓膜の動き具合を調べます。正常では鼓膜の内側も外側も空気ですので、同じ圧力の状態となっております。鼓膜はその名の通り”膜”ですので、押したり、引いたりすると鼓膜が良く動きます。しかしながら、鼓膜の内側のお部屋の中に水が溜まっていたり、鼻のすすりすぎから、鼓膜の内側のお部屋が陰圧になっていると、鼓膜の動き方が変わってきます。この、鼓膜の動き方をグラフにして表して確認いたします。 (鼓膜の内側のお部屋のの圧力を調整してくれる耳と鼻の間にあるの管の機能が悪くなると鼓膜の動きが悪くなり始めます。) -
聞こえ方のかくにん
通常我々は音がした場合には、密度波となった振動音を鼓膜が受け取り、その振動を鼓膜の内側のお部屋にある小さな3つの骨が、内耳というセンサー部分まで増幅しつつ伝えて、この機械振動が内耳にて電気信号として変換されて脳へ送送られて、最終的に音として知覚されます。この経路のいずれかに問題が生じると聞こえの能力が下がります。 聞こえを確認するためには、自覚的な検査と他覚的な検査があります。乳児であれば、生下時に新生児スクリーニングを受けることが多いと思いますが、OAEという検査を行ったり、ABRやASSRといった刺激に対しての脳波を測定加算して、反応の有無を検知する事によって聴力を調べることが可能です。幼児となると、おもちゃを利用して聞こえの検査を行ったり、5歳以上となると成人と同じ聴力検査が可能となります。