補聴器装用のゴールは何でしょうか?
補聴器装用の基本的なゴールはコミュニケーション能力の改善にあります。
軽度難聴者の場合、人数がそれほど多くない場所での会合にて最もメリットを感じることができるはずです。子音明瞭度が改善し、耳鳴りも多くの場合に改善を認めることが多いです。
近年の研究では認知症やうつ病に難聴が深く関わっていることが示唆され、某大学が行った研究では、難聴を放置することで、認知症の発症リスクが軽度で約2倍、中等度で3倍、重度の聴力低下で約5倍になると報告されています。
難聴を放置した場合には脳の萎縮も通常より早く進行することが報告されています。これは聴覚低下により脳に対する情報伝達量が少なくなるため、刺激減少にて神経細胞が衰え始めることが原因であると考えられています。
2017年にAAIC(国際アルツハイマー病会議)から、「認知症を予防できる原因の中で、難聴は最も大きな因子である。」と指摘され、難聴は認知症発症の大きなリスクであると認識されています。
難聴を放置した場合、外部からの情報や刺激が低下し、多くの健康リスクが生じるとされます。
人生100年とも言われる現在、これからも健康・安全に毎日の生活を送って頂くためにも、少しでも聞こえが悪くなったならば、早期に検査を受けて頂き、治療を開始されることが求められています。
また、残念ながら高度難聴で、語音明瞭度が30%未満の方の場合、補聴器での聴こえ・聴き取り能力の改善は極めて限定的であるという事実があります。
高度難聴の方につきましては、残存した聴力を利用する形の補助手段として補聴器を利用することとなる可能性が高いと思われ、過度な期待は出来ないと見込まれます。