補聴器が普及していない背景

  超高齢化社会となった現在の我が国では加齢性難聴の患者さんは年々増加しております。
  皆様は難聴者がどのくらいのおられて、そのうちその程度の方が補聴器をお使いなのかご存じでしょうか?

  補聴器工業会の調査によると日本における難聴者数は1430万人と推定されており、人口に対する比率は11.3%で世界で3番目に多いと報告されています。   
  一方、日本の
補聴器の普及率は、難聴者人口の13.5%のみとなっており、欧米諸国の普及率が30~40%であることに比べ、非常に低い水準となっています。

  その理由として、下記が考えられています。
①国からの
補助体制が諸外国に比較して不十分
②それに伴い難聴治療に対しての
啓蒙が適切になされていなかったこと、
③これまでの補聴器に対して「
わずらわしい」・「効果がない」等の不満があり、悪影響を及ぼしていた
  
  
そして、補聴器に対しての不満の背景には、下記が考えられます。
①当時の補聴器機器の
技術的課題
②十分適切な検査や調整が
行われないまま補聴器が販売されてきた歴史
③有る程度の高度の難聴にならない限り
補助が受けれないという事情
④補聴器
装用開始時期が当然諸外国より遅く、既に聴力がある程度増悪した後に装用開始となること、
⑤結果として、
当然機械に対しての満足度が下がる


  老眼が始まり、少しずつものが見えにくくなり始めると、眼鏡を使い始める方がほとんどだと思われます。加齢性の難聴についても同様のことが本来は必要と考えられ
少しずつ聞こえが低下し始めた段階で、補聴器について関心を持ち、情報を集めて、その使用を開始し、増悪する前に対応しつつ、装用調整しながら生活していくことで本来の補聴器の目的は果たされると言えるのです。


  


  皆様はメガネを作る時には、まずは眼科医院に行かれて、視力検査にて視力を測り、乱視の有無などを把握してから適切なレンズを選定します。そして、処方箋をもらった後でフレームのデザインも含めてメガネを決めることでしょう。

  補聴器を購入する時にも、同様に耳鼻咽喉科医院を受診され、聴力検査にて聴力を測り、他に治療しうる病気がないかを確認した上で、どのような音が聞き取りにくいのか、どの程度理解が出来ているのかを確認します。そして、補聴器技能者と相談の上、最適な補聴器を選定・調整を行い、試聴を開始されることが本来の適性な流れです。

  しかしながら国内の現状では、聴覚の専門家である補聴器相談医による検査や診断を受けなくても、依然として補聴器を購入できる環境になっております。
 
 これは気軽に購入出来るため、一見便利そうに見える反面、
①様々な病気の見落とし、
不十分な説明や押しの強い購入契約への勧誘トラブル
調整不足により補聴器のもつ力を最大限に発揮できていない可能性、
不適切な使用による耳症状の増悪、
などの懸念もあり、これらのことも補聴器が海外に比較して正しく普及されていなかったという現状を生み出す一因になっていると考えられます。   

  海外では補聴器購入の公的補助について聴力レベルについての規定が無い国が多く、医師が必要と見なせば、僅かの聴力低下でも補聴器購入に補助が出る国が多いことはご存じでしょうか?。   
  例えば、
デンマーク、ノルウェー、イギリスは100%補助があり、、ドイツでは購入時に約10万円の補助があります。イタリアでは約7万の補助がなされております。
  これに対し、アメリカや
日本では基本的に補聴器購入は自己負担となっています。少し詳しくご説明するならば、日本では両側の聴力が70dBを越えた場合に片耳のみ補助を受けることが出来ます。
  また、2018年より、補聴器購入費用が条件により
医療費控除の対象になることとなりましたので、状況は改善しつつあります。


  


  補聴器を安全、適切に難聴者に届けるためには、
どのようにその環境を整えていくかが今後の日本の課題となっております。公的補助の拡充に関しては、難聴についての正しい知識のより一層の広がりと、一人一人からのの働きかけが大切なのかもしれません。

  
  さて、補聴器装用無しで、聴力が落ちたことを放置していると、周囲の方とのコミュニケーションに負担を感じたり、会話が咬み合わずにストレスや孤独感を感じはじめることになることは明らかだと思います。

  補聴器の装用を始めることで、明るく楽しい、コミニュケーションの充実した本来のしあわせな毎日を維持していくことが可能となります。   
  難聴が進行して日常のコミニュケーションが取れなくなってから装用を開始することも一つで、お孫さんに昔話をしてあげたら喜ばれた、久しぶりに戻ってきた娘家族と一緒に食卓を囲んで楽しい思い出が作れた、と言うことも素晴らしいのですが、
本来はそれよりもっと早くの段階で、補聴器の装用を開始することが望まれております。

  言葉の聞き違えや聞き返しが増えてきたり、ヒソヒソ声が分からなくなり始めた、少し遠くからの人の話が聞こえにくくなったという段階で、
装用をご考慮頂く事が勧められております。

  補聴器外来は、そのような様々な聴こえの問題について、お悩みがある方々のために、少しでもお手伝いができれば、という思いで立ち上げました。

  何らかの改善をお求めの方は、ぜひ一度お気軽に
補聴器外来までお越しくださいませ。