急性に起こる難聴には突発性難聴や外リンパ瘻、メニエール病や急性低音障害型感音難聴や急性の音響外傷があり、治療により治る可能性が期待できます。
一方、慢性的に生じている難聴は加齢性難聴や騒音性難聴、薬剤性難聴、突発性進行性感音難聴が挙げられ、残念ながら治療が困難とされています。
これは、今のところ、音を感じるために重要な内耳の有毛細胞が再生能力を持たず、また、再生させるような治療法が確立していないために治療が困難であるとされているのです。
(ただ、研究段階では有毛細胞の分化誘導が、臨床試験の準備中となっておりますし、IPS 細胞を元にした内耳細胞の作製とその臨床応用からの治療についても研究が進んでおります。)
慢性的に聴力低下が生じ、回復が望めない感音難聴に対しては、予防を行うこと、そして症状が生じた場合に早期に難聴リハビリテーションを行うことが大切となります。
具体的には残存聴力ある場合には、補聴器や人工中耳の選択が行われ、残存聴力がない場合には人工内耳による治療が勧められることがあります。
感音性難聴の特徴
加齢性難聴等の感音難聴の場合、中・高音域の周波数の聴力低下に伴って、わずかな音の強弱の変化を通常より耳障りに感じたり不快に感じてしまう現象(リクルートメント現象といいます)が生じはじめます。
音が音として聞こえ始めるレベルも少しずつ大きな音であることが必要となり、また、音が聞こえ始めた後で、その音が大きすぎると不快に感じ始めるレベルまでの幅である、聴き取りに有効な音域(ダイナミックレンジ)に関しても、範囲は狭まります。
周波数分解能や時間分解能と言いますが、ほぼ同時やわずかな時間差で異なる方向から似たような音が聴こえた時、それらを正確に聴き分ける能力も低下していきます。
単音や言葉の聞き取りの能力も低下し、一過性の聴覚閾値上昇も起こり易くなります。
難聴を放置すること
難聴を治療せずにそのまま放置していると、学習障害や抑うつ状態をも生じさせることがあります。また、 聴覚廃用症候群といって、歪んだ音声で新しい言葉の学習を続けることで、異なる言葉を誤って学習してしまう事が積み重ねられてしまいます。ある程度の期間その誤った学習状態が継続してしまった場合には、言葉記憶自体があいまいで不適切なものとなってしまいます。
そうなってしまうと、補聴器の装用を開始された後に正しい音が提示されたとしても、その言葉の意味を正しく理解することができにくくなくなってしまうということが生じる可能性が高まるのです。
これはまさに、正しく音は聞こえるけれども意味が分からないというコミュニケーション障害を引き起こす土台にになってしまうのです。