最近の補聴器開発

   補聴器を付けていることを周りの方に気付かれたくないという方も多くいらっしゃると思われます。

  既にご存じの方もおられると思われますが、
最近では見えない耳内式補聴器といって、外耳道の奥深くに留置することで、外部からはほぼ全く見えない程度の小さな補聴器も販売されております。

  その他にも、
最近の生活スタイルの多様化やデジタル化に伴う技術革新により様々な新しい機能を持つ補聴器が開発されて、各社より販売されております。

  以下にその機能をご紹介させて頂きます。一つの補聴器が下記の全ての特徴を備えているわけでは御座いませんが、最近の補聴器開発の状況を知ることができると思われます。


1.防塵・防水加工

  
国際保護等級IP67を取得し、粉塵が中に入らず、水面から1mの水中に30分入れた後でも内部に浸水することのない機種があります。
  
  例えば
プールでの使用も可能となっています。


2.撥水加工・撥油加工

  特殊な撥水加工・撥油加工を行ったアクリル製外殻の補聴器が販売されています。


3.素材の強化

  一部の機種は素材を
チタン製にすることでアクリル製に比べ15倍の強度となっています。

  また、これにより外壁を0.2mmの薄さに仕上げることができ、更に小型化し、目に見えない耳内型補聴器として、装用感がめざましく改善しました。


4.周囲環境への最適な設定変更

  補聴器装用者を取りまく
環境は時間や場所が変わるにつれて、常々変化しています。

  それに伴い、それぞれの場面で望まれる補聴器の出力設定も変化します。授業中や会議中であったり、コンサート会場の中、外出して外を歩いている時、一対一の会話をしているとき、騒音の状態、聴きたい音源の位置、音量は様々で、その環境下で話をしている人の声の大きさ、抑揚、位置、文脈等も刻々と変化していきます。

  この変化について、
毎秒5万回以上も解析を行い、自動的に解析することで、最適な設定になるように、滑らかに切り替えを行うことが出来る機種があります。


5.スマートフォンやテレビに直接ワイヤレスでステレオ接続
 
  Bluetoothワイヤレステクノロジー経由で接続し、
通話や音声をスマートフォンからストリーミングしたり、IPADから補聴器へ音楽を直接共有することが可能です。

  一度に複数端末につなぐことも可能で、
あらゆる音源から音を送信することが可能です。


6.マイクロホンネットワークの利用

   補聴器に接続可能な
マイクロホンネットワークを補足的に利用して、補聴器の性能を高める開発がなされています。

  グループ内での会話や複数の話し手の会話を個別に聞く場合、テレビを見る場合等に良い適応となります。


7.装用者周辺の音声をより強力に増幅

  装用者の周辺360度における音声を分析して、
より積極的に強調することが可能となり、立ち位置を変えること無く、あらゆる方向からくる音声を聴き取ることが容易となった機種も販売されております。





8.信号処理スピードの超高速化

  
処理技術の革新により、音声処理チップの改善、消費電力の低減、メモリー容量の大幅増加が実現され、信号処理スピードの超高速化が可能となりました。

  これにより、自然音と補聴器から出る音の遅れが限りなく無くなり、より
自然な音の再現が可能となりました。


9.AI機能の追加

  音環境を常に
自動的に分析し、最適の設定へ自動調整するのみでは無く、AI機能が追加されたことで、装用者の好みの設定を記憶して似たような環境下でも自動的調整を行うことができる機種があります。

  また、新たな環境であっても
最適と想定される出力設定を自動推奨する機能を持つ機種があります。


10.言語理解の向上

  言葉の意味理解がより楽になるように、周辺360度の音環境を1秒間に100回以上解析し音特性、位置、大きさ、周波数を正確に分析して雑音を除去する機種があります。

  これにより、動きのある環境でも
言語理解が向上し、バランスの良い背景音下で声を明確に聴き取れる様になりました。

  
会話理解の向上や聴くための労力軽減、そして会話想起力が向上したことから、周囲をあるがままに正確に認識することが容易になったとされます


11.リチウムイオン型充填式電池の開発

  
充電ケースに補聴器をセットするのみで充電され、充電残量の確認も容易になった機種があります。

  1回の充電で
24時間の連続使用が可能となったり、空気電池に比較しランニングコストが半減したものもあります。


12.使用サポートの向上

  機種により
スマートフォンのアプリ経由で遠隔サポートを受けることができる様になりました。

  補聴器の
音量調整や周波数制御、使用記録確認についてもアプリで行う機器もあります。

  また、
紛失時の補聴器の位置同定機能や回路やレシーバー・センサー損傷の自己診断機能が付帯する機種もあります。

  
機種プログラムのアップデートも併せて行える状況です。





11.一側性難聴の方

  片側のみの難聴の方の場合、聴力低下した側の耳周囲の人の話が聞こえないことがあります。

  この様な場合でも、
両耳装用を行うことで、低下した側に生じている音声をワイヤレスで聞こえる側に転送し、認識できる様にする仕組みが開発されています。


12.耳鳴り治療

  耳鳴りでお悩みの方へ、補聴器を使用しながら
サウンドジェネレータという音響治療音源を同時に発生させる機種が利用されています。

  静かな環境下では、サウンドジェネレーターが小さなノイズを生成させ耳鳴りの違和感を大きく改善させます。


13.その他、多種多様な機能

会話を
スマートフォンに文字起こしする機能

アプリを介して日本語・中国語・英語・ドイツ語・フランス語・アラビア語等の27言語に
リアルタイムで音声翻訳する機能

補聴器に
歩数計・運動量・転倒検知機能・心拍数計測機能が付加されたもの。




このように
今まで懸念となっていた補聴器についての課題が、技術の進歩により少しずつ着実に解決されてきています。

補聴器に関するご質問や疑問点がございましたら、当院を受診される際に何なりとご質問くださいませ。