アレルギー性鼻炎

 発作性くしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉といった症状が明らかに何らかの抗原(花粉やダニ等の誘因)によって起こる場合を鼻アレルギーと言います。

原因
 発作に直接関連する直接要因(抗原:花粉、ダニ等)とそれを修飾する間接要因(天候、気温、ストレス、遺伝等)があります。

症状
 発作性くしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉ですが、この鼻漏内には多くの好酸球が認められます。
 鼻粘膜所見としては発作時に蒼白となり、水様性の鼻汁が認められます。





診断
 既往歴、症状についての問診、鼻内所見、鼻汁中の好酸球の有無の確認、皮膚反応、特異的IgEの順で検査を進めます。問診上は家族歴、居住地(足柄は日本有数のスギ花粉飛散地域です。)、職業等を考慮します。
 症状の季節性の有無も重要で、花粉症の場合季節の変化が明確になります。季節毎に考えますと春はスギ、ヒノキ等の樹木の花粉が、夏にかけてイネ科の雑草の花粉や真菌(カビ)が、、秋にかけてヨモギ、ブタクサ、カナムグラ等の雑草が多くなります。食物の場合は牛乳と鶏卵が挙げられます。

検査
 鼻汁好酸球検査と言って、鼻水内の好酸球という細胞の増多の有無を調べます。アレルギーかどうかの鑑別に極めて重要です。
皮膚反応テストは問診結果を参考に疑わしい抗原の抽出物を用いて皮膚反応を検査しますが、前腕皮膚内に抗原液を注射する皮内反応と、皮膚を軽くひっかいて抗原液に暴露させるスクラッチテストがあります。
誘発反応としては鼻粘膜反応と言って抗原を含む濾紙を直接鼻内に付着させる方法があります。その後、鼻内掻痒感、くしゃみ、濾紙付着部の蒼白化、水様鼻漏、粘膜腫脹のうち、2項目以上を認めるものを陽性としています。
 特異的IgE検査は採血のみで必要なアレルギーの原因物質の同定検査が出来る方法で、抗原と抗体の反応を利用して標識物質を測定することにより、ある物質に定量的に反応の程度を測定することが可能です。
非特異的IgE検査は個々の患者様の経過観察や治療効果判定に有効です。
 鼻アレルギーは不快症状が著明ですが、直接に生命を縮めることはまずありませんが、適切に治療しないと喘息、気管支炎、副鼻腔炎を生じることがあり、注意が必要です。





治療
 大きく分けて特異療法と非特異療法があります。抗原が明らかなものにはその原因物質に対し特異的に加療を行い、疑わしい状態や寒冷性鼻炎(血管運動性鼻炎)の場合等には非特異的加療を行います。
特異療法はまず、抗原の除去、回避です。花粉症では晴天や風の強い日の外出を控え、外出時は花粉の付きにくい服装をして、眼鏡やマスクを装用する事が勧められます。また、お部屋の掃除をこまめに行い、空気清浄機等を使用するなど花粉の除去を心がけることで症状の数割を押さえることが可能です。
 減感作療法は抗原が選別された場合に行う治療で、作用機序には解明されていない点もありますが、原因のアレルゲンエキスを微量から次第に増量して皮下等に注射し身体を原因物質に慣らしていきます。治療には少なくとも半年から数年を要し、副作用として発疹、ショック等が認められますので注意が必要です。

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 非特異的療法はヒスタグロブリン(ヒスタミン加ヒト血清グロブリン)等を使用した非特異的減感作療法から、薬物療法、手術療法が挙げられます。
 薬物療法は抗ヒスタミン剤、化学物質遊離抑制剤、ステロイド剤、その他の薬剤に分けられます。抗ヒスタミン剤は肥満細胞から脱顆粒し遊離した化学伝達物質がH1レセプターに結合することを競合的に阻害する薬剤で、睡眠作用のあるもの、ほとんど無い物、作用時間の長いもの等様々あります。
 化学伝達物質遊離抑制剤は肥満細胞の脱顆粒による化学伝達物質の遊離自体を抑制しますが、抗ヒスタミン作用のあるものと無い物があります。局所に用いるものもあります。
 ステロイド剤は局所性のステロイド剤(噴霧剤)が主ですが、状況により稀に経口投与も考慮されます。
 その他、副交感神経終末から分泌されるアセチルコリンに拮抗して鼻腺分泌を抑制する薬剤や、局所的に血管収縮剤を用いることがあります。
 また、漢方薬として用いる薬剤もあります。





 手術療法としては直接的な鼻閉除去の為のもの(鼻中隔彎曲矯正術、下鼻甲介切除術等)と、腫脹する下鼻甲介粘膜の縮小や変調を目的とした手術(電気凝固術、凍結手術、レーザー手術、トリクロリール酢酸塗布、翼突神経管切断術)があります。
 下鼻甲介電気凝固術は粘膜肥厚が高度で鼻閉が強い場合に、下鼻甲介組織を縮小させる目的で通電・凝固します。
凍結手術は低温で組織を変性・壊死させ、レーザー手術も同様に種々のレーザーを使用し下鼻甲介粘膜を蒸散、変性させます。
トリクロリール酢酸塗布は化学的に蛋白変性を生じさせます。
 翼突神経管切除術はいかなる治療を行っても改善しない場合に、翼突管神経を切断し、副交感神経節前線維と交感神経節後線維を切断することで鼻汁を減らしますが、口蓋の知覚消失や涙液分泌障害等の副作用が生じることがあります。