花粉症の治療

1. 治療の目標

 治療の目標は以下の状態までアレルギーの諸症状を改善させることとされます。

・アレルギー症状はない、あるいはあってもごく軽度で、日常生活に支障が無く、薬もあまり必要でない状態。

・症状が持続的に安定していて、一時的に急性増悪があっても頻度は低く、遷延しない状態。

・アレルゲン誘発反応自体がないか、または軽度の状態。

2. 治療法

 花粉症の治療法には大きく分けて、対症療法と根治療法の2つがあります。対症療法とは症状のみを改善させる治療、根治療法とは文字通り病気を根本的に直す治療法です。

1.対症療法

 対症療法で使用される薬剤としては次のように作用機序の異なるものがいろいろあります。詳細は薬物療法ページをご覧下さいませ。
 花粉症諸症状や生活の質の低下を改善することが可能です。

    ・花粉症等のアレルギー性疾患で増加する肥満細胞の活性を抑制する
   ・肥満細胞からの化学物質放出を制限する
   ・ヒスタミンなどの化学伝達物質が神経や血管に作用するのをブロックする 

 作用機序の異なる薬剤を重症度に応じて適切に使用することにより、56割の患者様は花粉症の症状がほとんど出現せず、高い生活の質を保ったまま花粉飛散の時期を過ごせると確認されています。

 また、レーザーなどによる手術療法も対症療法として行われています。


2.根治療法

 特に重症の患者さんには対症療法と並行して花粉症の原因に対し介入する根治療法が行われる場合があります。

 根治療法の代表的な方法に”減感作療法”があります。”減感作療法”は、”抗原特異的免疫療法”とも呼ばれ、花粉の抽出液を用います。注射などで低い濃度から投与し、その後少しずつ濃度を上げることで、花粉自体に対する耐性を獲得させる方法です。

 実際には花粉症の季節の3ヶ月以上前から始め、2年間以上続けることが必要となります。
この方法により鼻粘膜の肥満細胞数の減少が報告されており、注射で入れた抗原がリンパ球を刺激するためとされています。

 日本医科大にて行われたアンケート調査結果の報告によりますと、スギ花粉症に対する減感作療法により、薬剤の使用無しに軽症または無症状で季節を過ごせた方が花粉飛散の多い時期でも25%以上認められたとのことです。また、2年間以上減感作療法を続けた後に中止された場合でも約70%の患者様に効果が持続していた事が示されてます。

 しかしながら減感作療法においては、皮下注射に伴う痛み・通院が頻回となる利便性の低さ等のために本邦での実施率は低く、実施施設も限られておりました

 
そしてこの度、新しい免疫アレルゲン療法として、痛みや頻回通院といった上記のデメリットを大きく改善させた治療法が平成26年10月より本邦でも始められることになりました。花粉抽出液を皮下注射ではなく、舌下投与にて行うため、舌下免疫療法と呼ばれています。

 その他、具体的な対策別に治療法の分類として、情報取得、アレルゲン除去と回避、薬物療法、特異的免疫療法、手術療法と分けることもあります。

a.     患者とのコミュニケーション

アレルギー性鼻炎のメカニズム、治療法、合併症、予後、薬の使用法、検査結果に対する十分な説明と理解が重要で、日記の記入、規則的通院、日常生活の改善、アレルゲンの同定と除去などに患者側からの積極的な協力が欠かせません

b.     自然治癒、アレルゲン除去と回避

  鼻アレルギー(含花粉症)の自然治癒は比較的少ないと言われています。




スギ花粉の回避

   花粉情報に注意する。

   飛散の多い時期の外出を控える

   飛散の多いときは窓、戸をしめておく。

   飛散の多いときは外出時にマスク、メガネを使う。

   表面がけばけばした毛織物などのコートの使用は避ける。 

   帰宅時、衣服や髪をよく払い入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。

   掃除を励行する。