急性中耳炎

感染経路
 
耳管経由が最多
 鼻炎や鼻咽腔炎等の上気道感染に続き発症
 鼻洗浄や水泳などによっても生じる
 鼓膜穿孔がある場合、穿孔経由で海水浴等の後に起こることあり
 血行性に麻疹や肺炎・梅毒・結核等の感染性疾患に付随し生じうる

起炎菌
 肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、
    モラクセラ・カタラーリス、黄色ブドウ球菌等
 中耳に入った細菌が炎症を生じ、鼓室内粘膜肥厚・膿汁分泌へ

病態
 様々、一般に浸潤期、化膿期、穿孔期、吸収域と分類
 当初は中耳腔の粘膜下浮腫・充血に伴い、
   漿液性滲出液にリンパ球・白血球が含まれ中耳腔貯留した状態
 以後、粘膜下組織肥厚・細胞浸潤・分泌が増加、
   粘液・白血球・フィブリン等の貯留が増大、膿性貯留液へ
 鼓膜は発赤肥厚し貯留物のため膨隆
 炎症増強で鼓室内分泌物の圧力が強まり、鼓膜穿孔・外耳道膿汁流出
 穿孔後、粘膜の浮腫・肥厚改善、粘液分泌消退、自然治癒





症状
 炎症の程度により様々
 典型的には耳痛・耳閉塞感、拍動性、耳周囲に放散する
 発熱は37度~40度前後、悪寒・戦慄を伴いうる
 小児で痙攣の可能性あり、不明熱の原因とし注意
 難聴・耳鳴を生じ、膿汁貯留による伝音性障害による
 炎症高度の場合、内耳に炎症波及し感音性聴力低下の可能性
 多くの場合、炎症が改善すると聴力は改善
 その他、頭痛・めまい・食欲不振等を生じ得る

鼓膜所見
 初期、血管怒張・鼓膜発赤膨隆
 化膿期、鼓膜穿孔を生じ、膿汁を拍動性に流出
 吸収期、鼓膜発赤膨隆消退、穿孔閉鎖
 大部分は2~3週間で治癒
 鼓膜穿孔や石灰沈着、感音難聴等の後遺症を生じ得る
 不十分な治療から滲出性中耳炎や慢性化膿性中耳炎に移行する
 炎症が強い場合、頭蓋内合併症を起こすことがある
  乳様突起炎や顔面神経麻痺、錐体尖炎・髄膜炎
           硬膜外膿瘍・脳膿瘍・静脈洞炎等

治療
 原因疾患の治療を行う
 鼻処置・吸引により耳管口周囲の状態を整える
 疼痛に対し鎮痛薬や抗炎症剤を内服
 原因細菌に有効な抗生剤使用
 効果が見られない場合、耐性菌関与の可能性あり
   薬剤変更考慮し、鼓膜切開等を行うことあり
 滲出性中耳炎への移行や耐性菌誘発で乳様突起炎を生じうる

鼓膜切開術
 鼓膜切開し中耳腔貯留膿汁を排出させる手技
 穿孔が以後残存する可能性はほとんどなく、起炎菌同定検査に有益
 急性中耳炎にて鼓膜高度発赤腫脹・疼痛発熱等を有する場合行う
 すでに穿孔があっても膿汁貯留が著明で排出が不十分な場合行う
 滲出性中耳炎で貯留液が遷延する場合にも行う